被害者参加制度
2008年12月、日本の裁判に新しい制度が加わりました。
これまでは傍聴席で見守るしかなかった殺人や傷害事件などの被害者やご遺族などが、刑事裁判の場で被告人に対して質問するなど、直接裁判に参加できる「被害者参加制度」がスタートしました。
経済的に余裕がない方でも弁護士の援助を受けることができるよう、裁判所が弁護士を選定し、国がその費用を負担する「被害者参加人のための国選弁護制度」も同時にスタートしました。
また、刑事事件を担当した裁判所が損害賠償請求の審理も行って加害者の賠償を命じ、決定すれば確定判決と同じ効力を持つ「損害賠償命令制度」も同時に導入されました。これにより民事起訴を提起することによる時間的・経済的・精神的負担が軽減されることになりました。
被害者参加制度
参加申出ができる人
- 被害者、被害者死亡あるいは心身の重大な故障がある場合には、配偶者、子、孫、両親など直系の親族、兄弟姉妹
- 被害者の親権者、後見人などの法廷代理人
- 上記1・2から委託を受けた弁護士
参加申出ができる対象事件
- 故意の犯罪行為により人を死傷させた犯罪(殺人、傷害致死、強盗致死傷など十数種類の犯罪)
- 強制わいせつ、強姦等の性被害犯罪、業務上過失致死傷、誘拐など
- 強盗強姦など2に該当する犯罪を含む犯罪
- 1から3の未遂罪
参加の許可を得る手続き
- 被害者等(代理人弁護士)は予め検察官に参加申出をします。
直接裁判所へ参加申出をすることはできません。
申出は検察官が起訴してから、事件が裁判所に係属している間、いつでもできます。公判の途中で申し出ることも勿論可能です。 - 検察官は、自分の意見を付して裁判所へ参加申出を通知します。
- 裁判所は、被告人または弁護人に意見を聞いたうえで、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を審査し、相当性がある場合に参加許可決定をします。暴力団の抗争の事件で、被告人と被害者等とがそれぞれ敵対関係の組織に属しているような場合には、「相当性なし」として不許可になると考えられます。
- 裁判所は許可決定と同時に公判期日を被害者参加人に通知します。
被害者参加人代理人にできること
- 公判期日に出席し、法廷の柵のなかに在廷すること
- 検察官の権限行使に関して意見を延べ、説明を受けること
- 証人に尋問をすること
- 被告人に質問をすること
- 事実関係や法律の適用について意見を陳述すること
仕組みと新たな権利
損害倍賞命令制度
申出ができる人
当該刑事裁判の対象となっている事件の被害者本人または被害者の相続人です。
対象事件
業務上過失致死(交通事故など)を除き、その他は被害者参加制度と同じです。
申立手続き及び印紙代
当該刑事裁判の弁論が集結するまでです。
審理について
- 刑事判決終了まで審理しません
- 審理開始
刑事裁判の判決で有罪となった場合、刑事裁判をした裁判所がそのまま直ちに審理に入ります。
審理の回数は、特別な事情がある以外は4回以内で審理を終わらせなければなりません。それ以上の日数がかかるような複雑な事件では、裁判所は審理終結の決定をし、通常の民事裁判に移行します。 - 刑事裁判記録の利用
審理を行う場合には、刑事裁判の記録をそのまま取り調べて行うので、新たに事件の内容について審理することはありません。
被害者等は、自分の損害について証明する資料を証拠として提出し、調べてもらうだけでいいことになります。したがって、早ければその日のうちに、長くても4回で決まることになります。 - 異議申立と通常民事裁判への移行
損害賠償命令について不服があるときには14日以内に異議申立ができます。この場合には、通常の民事裁判に移行して別の裁判官で裁判が行われることとなり、刑事裁判の記録は送付されます。
被害者参加人のための国選弁護制度
弁護士の選定を請求するための要件
被害者参加人の資力として、犯罪被害を原因とした治療費等を控除した後、現金・預貯金等が200万円以下であることが必要です。
制度を利用する場合の手続き
上記の要件を満たす被害者参加人は、裁判所に対し、法テラス(地方事務所)を経由して被害者参加弁護士の選定を請求します。
少年審判の被害者傍聴
殺人や傷害致死など故意に人を死亡させた事件と交通死亡事故、さらにこうした事件・事故で被害者の生命に重大な危険が生じた場合が対象。被害者やその家族・親権者から傍聴の申し出があったら、家裁は必ず少年の付添人に意見を聞いて決めます。12歳未満の事件は除かれます。